リアル謎解きゲームの試作と考察【第4回ヒマラボ発表】
ヒマラボの第4回活動で、謎解きゲームに関する発表をしてきました。
謎解きゲームの試作をしてみる、という内容です。
背景と目的
僕は小さいころから、頭を使う系の遊びが好きでした。
小学生の時は将棋、中学高校は競技クイズ、大学に入ってからは人狼ゲームとリアル脱出ゲームです。
僕の野望というか目標は、一緒に頭使う系の遊びをしてくれる仲間を増やすこと。
言うなれば、「知的ゲームの普及」です。
当面は、現状最も関心がある謎解きゲームについて研究的考察をすることにしました。
謎解きゲームの面白さを他の人に伝え、普及をするために、自分自身も問題の作り手・提供者として謎解きの面白さがどうやって作られているのかを知りたいと思いました。
そこで、まずは謎解きのゲームの企画を1つとりあえず試作してみて、どんなゲームがおもしろいのか考えていくことにしました。
アプローチについて
ある程度整った形の謎解きゲームを作ろうとするにあたって考えたことは次の二つです。
- 謎解きゲームの構成はどうなっているか
- 問題のジャンルについて
- 「非日常感」の演出
SCRAP社などが開催しているゲームの構成を分析し、一般的な謎解きゲームの全体像を考察しました。
そして、個々の問題を必要となる知識や解法などからジャンル分けし、各ジャンルの問題をある程度バランスよく配置することで、まとまりのあるゲームを目指しました。
さらに、どうすれば参加者が没入して謎解きに取り組んでくれるかを考えるため、謎解きゲームの醍醐味と言われている「非日常感」についても考察をしました。
研究
ゲームの構成
謎解きゲームの構成は、僕が今までに参加したリアル脱出ゲームの講演と、解いたことのあるweb謎問題を元に考察しました。
その結果、謎解きゲームの構成は
- 複数の問題を組み合わせている
- 「最後の謎」のような存在がある
ことが特徴であることが分かりました。
問題のジャンル
次に、個々の問題について必要となる知識や解法、切り口などから分類をおこないました。
これは競技クイズをしていたことにヒントを得たアプローチです。
競技クイズの大会を開く際、通常は問題のジャンル(歴史・科学・地理・芸能などの分野のこと)が極端に偏らないよう、出題する問題を調整します。
これは、特定のジャンルに強いプレイヤーが有利になりすぎないようにするためです。多く出題されるジャンルに弱い参加者は、あまり楽しめなくなってしまいます。
謎解きゲームでも、問題の性質によっては個々の参加者に得意不得意があるかと思います。
漢字バラバラパズルは得意だが、ひらめきが得意でなく「頭が固い」といわれる人、などというようにです。
そこでゲームの中で出題する謎を分類し、適切な配置をおこなうことでより多くの人に謎解きをする機会を与え、楽しんでもらうことができるのではと考えました。
これについても過去の講演と公開されているweb謎から分析しました。
その結果、謎解きゲームで出題される問題は大きく次の6つに分類できることが分かりました。
- 言葉パズル:漢字やクロスワード等、単語を用いるもの。
- 数的パズル:数字の演算をするもの、平面あるいは立体のパズル。
- 観察:文章やイラストを観察することで答えにたどり着けるもの。
- おきかえ:記号や数字などを、アルファベットやカナに置き換える作業が含まれるもの。
- 実物:与えられた道具などを用いて解くもの。紙を切ったり折ったりなど。
- ひらめき:上記に分類できないひらめきが必要なもの。
これらのジャンルは、2つ以上の要素が同時に1つの問題に盛り込まれていることもありました。
(例:おきかえ+実物)
これらから、謎解きゲームの試作では
- 複数の謎と「最後の大謎」から構成する
- 上記6ジャンルの謎をまんべんなく配置する
ということを決定しました。
非日常感の演出
日常生活を送っていて「どこかに閉じ込められて今すぐに脱出しなければならない」といった状況に直面することはまずないでしょう。
リアル謎解きゲームでは、参加者が実際にどこかの部屋に入って制限時間内に問題を解き切ることを目指すため、日常では味わえない体験をすることができます。
その非日常感を演出するため、
- なぜ閉じ込められているか
- どうすれば脱出できるか
- 問題は部屋のどこに置かれているか
を設定しました。
また、閉じ込められる理由の設定に合わせて
- 演出用のスライド
- 演出用の音声
- 謎の答えとなるキーワード
を作成しました。
実際の試作ゲーム(一部公開)
反省点
運営上
- 一部、準備物に不備があり当初の予定とは違う出題方法となったため、参加者に混乱を招いた
- 問題に印刷ミスがあった。
- 残りの制限時間とかみんなに見えるようにしたらよかった。
- BGMもあれば雰囲気出そう。
ゲームそのものについて
- 設定した制限時間が短すぎた。
- 難易度調整が難しい!極端に時間のかかってしまう問題があった。
- ジャンル「数的パズル+おきかえ」の問題は製作が非常に難しかった。謎製作支援ツールを誰か作って欲しい・・・。*1プログラミング勉強して作ってみようか、とも思ったり。
ラボメンからの意見と今後の発展
今回の参加者の中には謎解きに一切触れたことがなく、それほど関心もないという人もおられました。実際のリアル脱出ゲームの講演でも、友達の付き添いでついて行っただけといった参加者もいるのではないかと思います。そういったゲームへの関与が比較的低い人でも、なんとなくやってみようと思える、あるいは謎解き以外の部分で楽しみを感じてもらえるような何かを見つけたいです。
僕の中で「謎解きってこんな感じやろ、こんな解き方するやろ」みたいなのがあって、それが制限時間の短さや、謎解きに触れたことがない人にとって難しく感じるような設問につながっているのではという先生からの指摘はなかなか耳が痛かったですけど、ほんとにそうやなと思いました。
没入感を増幅させるため小道具のデザインにも改良が可能です。
たとえば今回は平安時代の貴族が登場するという設定だったので、説明に用いるプリントを和紙で作ったりフォントを昔っぽいものにしたり、参加者のネームプレートのデザインもお守りのようなデザインにしたりと工夫ができるのではないか、と指摘をいただきました。
素人には製作が難しい立体パズルも、3Dプリンターがあれば簡単に作れるのではないかという話も出ました。来年商学部のどこかの研究室にも3Dプリンターが導入されるみたいなので(?)、なんとか使わせてもらいたいです。
立体パズルは「何かのカタチを完成させる」という目的が、「謎を解いて特定の場所から脱出する」というリアル謎解きゲームととても相性がいいのではないかと予想しているので、楽しみです。
謎のジャンル分けについては、自分自身の謎解き経験がそれほど多くないのでさらに研究が必要です。
今回は数人のチームを2つ作って、それぞれのチームごとにゲームに参加してもらいました。
チームでプレイする時と、完全に個人で挑戦する時の問題の難易度・制限時間の長さについてはまだ分からないことが多いですし、そもそもチームで解くべき謎と個人で解くべき謎には違いがあるのか、チームでプレイさせるときに役割分担させるにはどうしたらいいのか、とかも考えることができます。
総括
楽しかった、とても凝っているという評価を参加者からはいただき、とてもよかったです。
今回の「ある程度の形のゲームをとりあえず作ってみる」という目標は、達成できたと感じています。
改善点や、新たな疑問・仮説についてこれからさらに考察を深めていきたいと思います。
*1:答えにしたい数字と文字を入力したら、残りの対応表を考えてくれる、みたいな