夜間大学生あべのブログ

日記・考えたこと・旅・研究・読んだ本について書きます

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第3回ヒマラボに参加して

阿部です。


7月28日(土)に開催された第3回ヒマラボに参加してきました。
いつもの通り、振り返りをしていきます。

日本で研究が進んでいない分野に挑むのはカッコいい

まずはエンプロイヤーブランディングについて研究されている池田さんの発表でした。

論文を探す際に、GoogleScholarで「エンプロイヤーブランディング」と日本語検索したところ3件(学術論文は無し)しかヒットしなかったとのこと。
一方、英語で「Employer Branding」と検索すると2万件以上の論文がヒットしていました。
EBについて、日本では全く研究が進んでいないようです。

その中でも、イギリスの大学が定着率との関連をまとめた最近のレビュー論文(論文のまとめ論文)を紹介してくださいました。
その論文によると、やはりEBは定着率に関係することが分かりました。
そして、EBをしていることを会社が社員に対して示すことが必要であるとも分かりました。

興味深いと感じたのは、「コミットメントしている」という状態がどんなものかについて。
コミットとは「心理的契約」と言え、雇用者と被雇用者の心理的ニーズが一致した状態と考えられるとのこと。
確かに、雇用者が従業員に「これをしてほしい」って思うことと、従業員が仕事で「これをしたい・こうやってしたい」と思うことが一致していれば、自然と仕事に力が入ると思います。

今後の展開としては、さらに研究対象の切り口を絞り、それを扱っている論文を読んでいくということでした。

省略されるコミュニケーション

続いては、仕事上のコミュニケーションを研究されている阿久沢さんの発表。

通常、会話は多くの「省略」がなされていることを例を挙げながら確認しました。
たとえば、普段の会話で「昨日は友達と飲んでいた」という時に、「友達の名前は何・店はどこ・何の酒を飲んでいた・食べ物は?」などの細かい事項を全て話すことはしません。
話を聞いた受け手は、その情報を自分で補完しながら話を聞くことになります。その際に詳細が誤って補完されることもありますが、会話を続けるのにそれほど大きな問題にはならないでしょう。

しかしこれが仕事上の会話になると、誤った補完は仕事上のミスにつながり危険である、と。
では、どうすれば省略された情報の誤った補完をなくせるのか、ディスカッションがなされました。

森田先生が見せて下さった講義スライドの一部では、「同じデータベース」ともいうべき理解の共有が情報の正しい伝達には必要であることが示されました。
また、実際的な方法としては相手に「それってこういうことですよね?」と確認することが良い、という話が出ました。しかし、その「こういうこと」にも理解の共有ができていない場合は情報の伝達がうまくいかないことに。
確認を取られた話し手がめんどくさくなって、「たぶんそういうことだよ」みたいに曖昧に返してしまう可能性もあり、なかなか難しいなというところです。

ところで科学論文は「言葉の定義・目的・問い」といったものを明示するという「共通の認識」が通っているものです。だから、言葉や文化が違っていても科学論文を読む際には同じ思考の型があるので情報の伝達は容易だとか。
ただし学会によって言葉の定義が異なることもあるそうで、これまた難しい・・・。

個人的には、コミュニケーションにおいて情報の完全な伝達をいつでもおこなうことは不可能だと思います。
ひとりひとりの考え方・記憶形成などは違うので、完全に同じデータベースを持ちえないからです。
言葉の定義の確認など必要な措置は講じながらも、ある程度は誤補完を受容できるような人間になりたいと思います。

ドイツのボードゲーム事情と自作ゲーム

次は、福大ボドゲ研究会の部長をしておられる4年生の増田さん。
twitter.com

ボードゲームの普及を目的に、ドイツのものを参考にした子供向けゲームの試作をされていました。

ドイツではボードゲームが盛んで、教育にもゲームが取り入れられているとのこと。
何かを直接学習するというよりは、集中力や論理力などを養う機会としてゲームが用いられているようです。

そこで増田さんは既存のゲームを3種類に分類し、それを基に日本で小学生向けに手軽に遊べる自作カードゲームの提案をしました。
実物も持参していたのですが、スリーブに入っていて某アニメキャラでデザインされており、売り物みたいでした。

ボドゲサークルは僕もよく遊びに行っているのですが、単純に頭を使うゲームから、運要素が強くパーティー感のあるものまで様々なゲームが遊べて楽しいです!

どんな企画方法が良いだろう・・・

僕も発表をしてきました。
題材は体験型謎解きゲームで、今回のテーマは学園祭の企画方法の策定についてでした。

方法としては、

  • 公演型:SCRAP社の公演に近い形
  • テスト型:ペーパーテスト
  • 展示型:問題を大きく印刷して張り出す

の3種類があると考え、それぞれの長所短所を比較してどの方式にするかを考えました。

また、テスト型のプロトタイプとして謎解きペーパークイズを参加者の皆さんに解いていただきました。

発表の中では、「公演型は最も挑戦し甲斐があって自分自身もやってみたいが、準備しなければならないことが多く制約もあるので難しい。」という結論を話しました。
が、森田先生や池田さんからは「せっかくなら難しいことやってみればいい」というご意見を頂きました。

実際にテスト型を試してみたところ、一定の面白さはあるものの、みんなが黙々と解いていて目に見える盛り上がりは無いと感じました。
また、やはり以前に行った公演型のゲームが今までで一番楽しかったという意見も出ました。
chitabea.hateblo.jp

僕の研究の目的は「面白い謎解きはどうすれば作れるのか明らかにする」ことであり、学園祭の企画はその研究の実装の場であることを考え、やはり公演型の企画に挑戦したいと思います。

具体的には、各日午前午後に1回づつ公演をおこない、他の時間はテスト型や展示型の問題を来場者に楽しんでもらうつもりです。

また、次の発表までに研究しておくべきことは、まだ考えられていないので早急に準備をしていこうと思います。

まとめ

今回は、仕事に関する社会人の研究が2つ・遊びに関する学生の研究が2つと、内容がはっきり違う研究的発表だったことが全体の印象でした。

参加者の皆さんのディスカッションを聞いたり、こうしてまとめ直してみたりすると、自分の思考力の浅さとか言語化のへたくそさを思い知らされます。
ただ、実際に社会で活躍されている大人との対等な議論に加わる機会はあまりないので、これからも積極的に関わっていこうと思いました。
自分の研究発表もさらに精度を上げ、これからは参加者からどんな意見をもらいたいかをはっきりさせてから発表に臨みたいです。